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今回は、衝動買いがきっかけで夫婦関係が悪化し、ついには寝室すら閉め出されてしまった男性にお話を伺いました。いったい「ごく普通の夫婦」に何が起きたのでしょうか。
前編「『もう寝室に来ないで!』高額買い物が止められない夫に、妻が下した最後通告」に続く後編です。
「最初は『なんで勝手に決めるの?』と怒鳴られました。でも、それが何度か続くうちに、だんだん何も言われなくなって……。無言でスルーされるようになったんです。あれは、本当にきつかったですね」
そう語るソウジュさんにとって、沈黙は怒りよりも怖いものでした。何か話しかけても、「ふーん」「そう」と素っ気ない返事だけ。子どもの行事や学校の連絡など最低限の会話はあるものの、それはまるで“業務連絡”のようなものだったといいます。
「徐々に、家に帰るのが憂鬱になっていきました。何を考えているのかもわからないし、謝ろうにも切り出し方がわからない。完全に心を閉ざされている感じで……。僕もおしゃべりな方じゃないから、どうすればいいのか途方に暮れていました」
そして寝室への立入りも禁止に 次ページ
夫婦の間に会話が減ると、“ベッドの中”の関係にも影響が出てきます。
もともとは月に数回、夫婦の時間があったというソウジュさん。しかし衝動買いが目立ち始めてからは、奥さまから「疲れてる」「今日は無理」と断られる日が増え、いつしか完全にゼロに。
「それでも、何かのきっかけでまた一緒に寝られるかもしれないって、淡い期待は持っていたんです。でもある日、寝室に入ろうとしたらドアが閉まっていて、ノックしても返事がない。それでも粘っていたら、妻が小声で『寝室には入らないで』って……。ああ、もう完全に拒絶されたんだなって思いました」
その後は、冒頭でも語られていたように、バッグでドアを物理的に塞がれるなど、“話すつもりすらない”という明確な拒絶のサインが突きつけられるようになったのです。
ストレスで再び衝動買いしてしまって 次ページ
「いま、妻に拒否されること自体が一番のストレスなんです。でも、そのストレスを抱えていると、また何か買って発散したくなる。ダメだってわかっていても、どうにもならなくて……」
レス状態が続くなかで、自分の存在意義が揺らいでいく感覚に苛まれるというソウジュさん。気分が沈んだまま街を歩いていると、ふと目に入ったブランド品や家電が「買ってスカッとしたい」という衝動の引き金になってしまうといいます。
「この前も、帰り道で新品のゲーム機を見かけて、気づいたらレジに並んでました。家に着いてから『しまったな……』と思っても、タイミングを逃して妻に言えずにいたら、後日カード明細を見た妻が『ふーん、また買ったんだ』って。あの呆れた目、ショックでしたね。自業自得なんですけど、本当に悪循環です」
もちろん、ソウジュさんも何もしなかったわけではありません。なんとか理解してもらおうと、「これは自己投資なんだ」「長く使えるから損じゃない」といった説明を繰り返してきたといいます。
しかし、その言葉は奥さまの心に届くどころか、むしろ怒りを深める結果に。
「妻からすれば、『自己投資も結構だけど、家計や子どもの将来は?』ってことですよね。結局、僕の言葉はただの言い訳にしか聞こえなかったんだと思います。そうやって反論されると、僕も心のどこかで『なんでわかってくれないんだ』と逆ギレしそうになってしまう。冷静に考えれば、完全に妻が正しいんですけど……その場になると感情的になってしまって」
「まずは今まできちんと向き合ってこなかった家計を、自分でも把握しようと思います。収入や固定費、生活費など、妻に丸投げじゃなくて、ちゃんと見える形にしていきたい」
そう語るソウジュさんは、家計簿アプリを使って、給与明細や口座残高、カードの利用履歴をリアルタイムで管理することを検討中。そうすることで、「このタイミングで買い物したら今月は赤字になる」といった感覚を持ち、衝動にブレーキをかけられるのではと考えています。
「とはいえ、これも妻の協力があってこそなんですよね。今は完全に拒絶されているので、まずはLINEやメールで“申し訳なかった。家計を一緒に見直したい”って、下手に出て伝えてみるつもりです」
「大きな買い物をするときは、必ず相談しようと決めました。でも……今の関係では、声をかけただけで嫌な顔をされそうで。正直、それだけでもハードルが高いんです」
そう話すソウジュさんですが、それでも「ひと言でも声をかける」という行動が、これ以上の関係悪化を防ぐ鍵になると考えています。
たとえば「3万円を超える買い物をするときは、まずLINEで“これ買おうと思ってるけど、どう思う?”と送る」。返事を急がせず、ただ相談という“形”を作る。そんな小さなステップから始めてみたいそうです。
「どうせすぐに『いいよ』なんて返ってくるとは思ってません。でも、何も言わずに買って無言で怒られるより、100倍マシですよね」
「子どもが大きくなれば教育費もかかりますし、家族で旅行にも行きたい。その“共通のゴール”が見えていれば、僕も衝動買いに走らなくなる気がするんです」
まずは、「子どもの進学費」「毎年の家族旅行」、そして「将来のマイホーム」など、夫婦で同じ目標を設定し、そこに向けて一緒に積み立てていくことを考えているそうです。目標は紙に書いて貼り出し、買い物のたびに「今、本当に必要なものか?」を自問できる環境を作りたいと話します。
「もともと妻も旅行が好きでした。子どもが中学生になったらヨーロッパに行こう、なんて話していたこともあります。関係が少しでも改善していけば、またそういう“夢の会話”ができるといいなと思っています」
信頼を取り戻すには 次ページ
一度失った信頼を取り戻すには、言葉だけの約束では足りません。ソウジュさんも、「妻の目が厳しくても、地道に改善を積み重ねるしかない」と腹をくくっているといいます。
「正直、僕の買い物癖はすぐに治らないかもしれません。でも、もし“また買ってしまいそう”になったときは、まず妻に報告する。そして、もし『やめとこう』と言われたら、素直に従う。それだけでも、小さな誠実さとして伝わるかもしれないと思っています。もちろん、買い物以外のストレス発散方法も見つけていかないといけません」
妻の気持ちを尊重し、裏切らない行動を積み重ねる。そんなシンプルな繰り返しこそが、関係修復への最善策だと、今は信じているそうです。
「レスの状態は、正直、絶望するほど辛いです。でも妻だって、本来は寝室を閉め出すようなこと、したくなかったはずです。なのに、僕の積み重ねた態度や失敗が、そうさせてしまったんですよね」
インタビューのなかで、ソウジュさんは何度も「反省しています」と繰り返していました。ただ一方で、「すぐに元通りにはならない」とも、現実的な見通しを持っています。長年の不満や不信感を取り除くには、相応の時間と行動が必要だと痛感しているからです。
「いきなりラブラブな関係に戻るのは無理でも、まずは普通に会話できるようになりたい。家計も一緒に見直して、未来のことをちゃんと考えられるようにしたい。子どもだって、今のままの両親を見ていたらきっとつらいと思う。自分の身勝手で家族を不幸にするのは、もうやめたいんです」
「レスによる孤独感や仕事の疲れを、“買い物”以外の方法で発散しないといけませんね。最近は、ウォーキングやジョギング、本を読むなど、少しずつ試しています」
ソウジュさんは、「散財だけがストレス発散じゃない」と気づき、意識的にお金をかけずに楽しめる時間を増やそうとしています。図書館で雑誌を読む、ジムの体験に行く、友人とカフェで過ごす……そんな小さな行動の積み重ねが、“レスの悪循環”を断ち切るヒントになるかもしれません。
寝室への“立ち入り禁止”だけでなく、ソファのクッションすら片づけられる――まさに「ここまでやる!?」という状況に陥ったソウジュさん。しかしそれは、奥さまの「もう限界」という心の叫びでもあったのでしょう。
衝動買いのエスカレートと、コミュニケーションの断絶。その2つが絡み合い、夫婦関係は深刻なレス状態に。けれどソウジュさんは、「まだ諦めたくない」と強く語ります。
家計を共有し、大きな買い物は相談し、夫婦で同じ目標を持つ――どれもシンプルなことですが、実行できるかどうかが未来を左右します。
「妻が何を思っているのか、正直まだ全部は分からない。でも、僕が変わろうとしている姿を見せ続ければ、いつかは伝わると信じたいんです」
その言葉には、痛みと反省、そして再出発への決意がにじんでいました。
高額な買い物や金銭感覚のズレが原因で、レスや別居にまで発展する夫婦は決して少なくありません。「これ、うちにも当てはまるかも」と感じた方もいるのではないでしょうか。
今はまだ笑って受け流せる段階でも、放置すれば夫婦の心の距離は、いつしか取り返しのつかないところまで広がってしまいます。
だからこそ、「相談なしの高額な買い物」は、夫婦関係における“地雷”になりかねません。“レス”という形でその代償を払う前に、互いの考えや家計状況を丁寧に共有しておくことが、夫婦円満の鍵となるでしょう。
今回の取材を通じて私が感じたのは、「大きな買い物そのもの」が悪いわけではないということ。問題は、それを“ひとりで決めてしまうこと”、あるいは“ストレス解消の手段として依存すること”にあるのではないでしょうか。
何が本当に必要で、何が一時の逃避なのか。見極めが難しいと感じたときは、専門家に相談するのもひとつの方法です。
最後に――取材後、立ち上がったソウジュさんは何度も「まだ諦めたくない」と繰り返していました。そしてその表情には、不安とともに、どこか吹っ切れたような前向きさもにじんでいました。
ゆっくりでも、一歩ずつ。
信頼を取り戻す道のりが、きっとこれから始まっていくのでしょう。
編集部より:
「最近、妻との距離がどんどん開いている気がする」
「レス状態が続いていて、もうどうしていいかわからない」
そんな悩みを抱える男性の声を、私たちは取材し、記事にしています。
あなたの経験が、同じように苦しむ誰かのヒントになるかもしれません。
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この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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