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アンヌ遙香です。今おすすめしたい映画をフックに今思うことを語る連載で今回は『クィア』をクローズアップして語ります。
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クィア(Queer)とは、諸説ありますが、LGBTに当てはまらない性的マイノリティや、性的マイノリティを広範的に包括する概念であるといわれています。
クィアは、もともと英語で「不思議な」「風変わりな」「奇妙な」という意味を持つ語であるようですが、 かつて男女以外の性自認や異性愛以外の恋愛に理解がなかった時代に、同性愛者への蔑称として使われていたこともありました。現代は肯定的な意味合いで使われる場面が増えています。
昨今、恋愛対象=異性というのも全く一般的ではなく、さまざま価値観のもとそれぞれのライフスタイルがある、という姿勢をとるのが当たり前。私も最近は「この人は男性/女性が好きに違いない」という思い込みは捨ててフラットに接することを心がけています。
実際に最近あったことで私が反省しているのは、顔見知りの男性店員さんから「最近肌荒れに悩んでいるんですけどおすすめの化粧品とかありますか」と聞かれ、ある洗顔料をお勧めしたときの出来事。左手薬指の指輪が目に入った私はとっさに「これでしたら奥さんや彼女さんとも共有できるからおすすめですよ」なんて気軽に言ってしまったわけですが、とたんに反省。
彼のパートナーが女性であるとは、誰も言い切ることはできないわけです。そういうときは「パートナーの方」とか「一緒にお住まいの方」などと表現するのがやはりマナーですよね。そういった流れが映画界にも多く見られるようになってきている印象があります。ラブシーンは決して異性間のものだけではないし、同性同士のラブストーリーはもはや珍しくなくなっています。
恋愛において、男、女、若い、年老いている、などという概念は全く意味をなさず、そこに存在するのは「恋」及び「愛」だけ、というのを改めて思い出させてくれるのが、この映画「クィア」なのです。
前半の、狂おしいくらいに「片思い」相手を追いかけるリーの姿はとにかく情けない、かっこ悪い。
何とかして好きな人の気を引きたい、町を歩いていれば「偶然居たりしないかな?」となんとなくそわそわと周りを見回してしまう。とにかく一緒にどこか行きたい。行先や目的というのは実は言い訳で、とにかく好きな人と一緒だったらどこでもいいから行きたい。ついてきてくれるならこちらが全部費用をもつのもやぶさかではない!くらい。触れたい。
「好きな人に好かれること」以上の奇跡がこの地球上にあるのだろうかと、窓の外の夜景を眺めながら、想いを馳せる。そこに映る自分の影をじっと見つめる。こういう「片思い」、一度は経験したことありませんか?
パートナーに恵まれて、一緒にさまざまな経験を共有できる「恋愛の成就」はこの上なく幸せで、最高です。ただ、「片思い」というのも捨てがたい。相手の気持ちがわからず、いくらモーションをかけてもつれない反応をされる片思い。片思い中はご飯ものどを通らなくなり、何も手がつかなくなる。
片思い中は、こんな地獄あるだろうかと感じながらも、数年後にそのときのことを思い返すと、あのときは「人生の青春」だったな、なんてフッと笑いたくなる。実は片思いって、情けないしどうしようもないけど、実は恋愛の醍醐味だよねなんて思い出させてくれる「クィア」。
片思いはみっともない。でも触れたくてたまらない。みんなが一度は経験しているあの生々しくみずみずしい時間に、年齢も性別も場所も時間も関係ないのだということをしみじみとわからせてくれる作品です。
新宿ピカデリー 他 全国公開中 ©2024 The Apartment S.r.l., FremantleMedia North America, Inc., Frenesy Film Company S.r.l. 配給:ギャガ
映画『クィア/QUEER』
監督:ルカ・グァダニーノ(『君の名前で僕を呼んで』、『チャレンジャーズ』)
出演:ダニエル・クレイグ、ドリュー・スターキー 他
原題:Queer/2024年/イタリア・アメリカ/カラー/ビスタ/5.1ch/137分/
字幕翻訳:松浦美奈 映倫区分:R15+
Profile
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道生まれ。お茶の水女子大学大学院ジェンダー日本美術史修士。2010年、TBSに入社。情報番組『朝ズバッ!』、『報道特集』、『たまむすび』等担当。2016年退社後、現在は故郷札幌を拠点に、MC、TVコメンテーター、タレントとして活動中。文筆業にも力を入れている。ポッドキャスト/YouTube『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。仏像と犬を愛す。インスタグラム:@aromatherapyanne[/hidefeed]
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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