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「クチャクチャ音が無理」と妻に言われて、ただでさえギクシャクしていた関係に“セックスレス”という深刻な問題まで加わった……。ヨシヒサさんはそこでようやく、自分の行動がどれほど妻を傷つけてきたかを実感したといいます。
この記事では、ヨシヒサさんが「咀嚼音」をめぐる問題とどう向き合い、夫婦関係の修復に向けてどんなステップを踏んでいったのかを具体的に伺いました。
実は、ヨシヒサさんが直面していた問題は、食事中の不快感だけにとどまりませんでした。食べ方の癖が、夫婦の親密な時間にまで影を落としていたのです。
「ある日、妻から『音に敏感になりすぎて、夜に近づかれるのも苦痛なの』と言われました。正直、深いショックを受けました。
その言葉を聞いた瞬間、僕たちの間にもうセックスレスが現実になっていると痛感しました。お互いの距離が、心の面でもどんどん離れていくと、ただのスキンシップですらためらわれるようになるんですね。『たかが食べ方』で片づけてきた自分の認識が、どれほど浅はかだったかを思い知らされました。
それまで、夫婦の関係がうまくいかない理由をどこか外側に求めていた自分がいました。でも、実際には僕の些細なクセが、じわじわと彼女を追い詰め、信頼をすり減らし、最終的には精神的なつながりさえも揺らがせていた。妻との会話が減ったのも、すべて連動していたんだと思います。自分の中にあった甘えや鈍感さを、ようやく受け止めることができました」
──「食べ方を変える」と聞くと簡単なようでいて、実は思った以上にハードルの高いこと。とくに忙しい日常のなかで、つい早食いや“ながら食べ”になってしまうという方も多いはずです。ヨシヒサさん自身は、どうやってその習慣を変えていったのでしょうか。
「僕の場合は、『まずは箸を置く』ということを徹底しました。一口食べたら、噛んでいるあいだは箸をテーブルに置いて、飲み込んでから次のひと口を口に運ぶ。そのくらい極端に区切らないと、無意識に次々と食べてしまう癖が抜けなかったんです。でもこの“止める動作”を入れることで、自然と食べるペースが落ちていきました」
“飲み込むまで次を口に入れない”という基本のマナーを意識しはじめてから、ヨシヒサさんには意外な気づきもあったそうです。
「ふと、『こんなに食事って落ち着いた時間だったっけ?』と思ったんです。以前は仕事の合間などに何かをかき込むように食べることが多くて、『食事を楽しむ』という感覚すら薄れていました。でも、ゆっくり食べるようになってからは味をしっかり感じられるようになったし、胃もたれも減った。結果的に、自分の体調にも良い影響があったと思います」
この変化は、健康面だけでなく夫婦の関係にも良い影響を与え始めていました。
「以前は『どうせまた注意されるんだろうな』って、話しかけることすらためらっていたんです。でも、少しずつ自分が変わっていくことで、妻の機嫌も前ほど悪くならなくなったと感じます。『またあの嫌な空気になるかも』という緊張が減って、僕自身も自然に会話ができるようになりました」
完全に直ったわけではないものの、意識的に行動することで、夫婦の関係にも小さな光が差し込み始めています。
「まだ完璧ではありません。つい無意識に戻ってしまうこともあります。でも、今は『あ、音立ててたかも』とその場で自分で気づける。これって僕にとっては大きな進歩なんです」
「離婚話が出たときは、自暴自棄になりそうだった」 次ページ
――ヨシヒサさんは今、離婚危機からどのくらい脱却できていると思いますか?
「完全に安心できる状態ではないですが、少なくとも『一緒に食事をしない』という最悪の事態は脱しました。最近では、妻の方から『今日は外食でも行ってみる?』と誘ってくれることもあるんです。もちろん、ときどき『ちょっと音立ってるよ』と言われることもあります。でも今の僕は、『ごめん、気をつける』と素直に受け止められるようになりました。
離婚話が出たときは、本当に自暴自棄になりそうでした。でも今では、妻に指摘されるまで自分の癖を放置していたこと、そしてそれがどれだけ妻にストレスを与えていたかをようやく理解できたと思います。これからは、食事の仕方だけでなく、日常生活のいろんな面で『相手が嫌がること』にもっと敏感でいたいです」
――同じように「クチャラー」を指摘されて悩んでいる人たちに向けて、何かメッセージはありますか?
「僕も偉そうなことは言えませんが、『自分はクチャラーじゃない』と否定する前に、一度冷静に確認してみるのが大事だと思います。録音するでも、動画を撮るでも、自分の食べ方を“客観視”する方法はあるはずです。
そして、ただ直そうとするのではなく、どう“意識し続けるか”に注目してほしい。僕は『箸を置く』『一口ごとに飲み込んでから次を食べる』という、ごく簡単な行動パターンから始めました。ポイントは『完璧を目指さないこと』。一気に全部を矯正しようとすると、かえってストレスになって挫折しやすいんです」
――完璧を求めず、でも続ける。その姿勢が大切ですね。
「はい。そしてもうひとつ、自戒を込めて言いたいのは『相手の注意を軽く受け流さないこと』です。僕は最初、『うるさいなあ』くらいに受け止めていました。でも、その態度が妻の不信感をどれだけ増幅させていたか…いまはよくわかります。
大切な人が何かを気にしているなら、その背景にある感情まで考えてみるべきです。そこを理解せずに『気をつけるよ』と口先だけで済ませてしまうと、根本的な解決にはなりません」
“たかが食べ方”と思わずに、相手の心に目を向けること。それが夫婦関係をこじらせない最大のポイントなのかもしれませんね。
妻と食卓を囲み、笑い合う時間を取り戻したい 次ページ
ヨシヒサさんは、妻から「クチャラー」と指摘された当初、それを深刻には受け止めていませんでした。しかし、妻が強い苦痛を訴えるまで自身の行動を振り返らなかったことが、夫婦間のコミュニケーションを一気に崩し、ついには離婚危機を招くことになってしまったのです。
そこから彼は、食べ方を客観視し、少しずつ改善する努力を始めました。その結果、現在は妻との関係も回復傾向にあるといいます。ポイントは、「相手を思いやりながら、自分の習慣を徐々に修正していく」こと。そして何より、「意識し続けるための工夫を絶やさない」ことにあるでしょう。
実際にヨシヒサさんが取り入れた、「箸を置く」「ボイスレコーダーで咀嚼音を確認する」「噛むときは口をしっかり閉じるよう集中する」といった習慣は、どれもシンプルながら、継続するには強い意志が求められるものです。頭では理解していても、忙しい日常の中でつい忘れてしまう。その“つい”をなくすためには、小さな気づきを積み重ね、パートナーと誠実に向き合い続ける姿勢が何より大切なのだと、彼は語ります。
夫婦の危機とは、大きな出来事が原因になるだけではありません。むしろ、日々の中に潜む「小さな違和感」が、時間をかけて確実に心の距離を広げていく……そんなケースも少なくないのです。
“クチャラー”という言葉が浸透した今、「咀嚼音」は重大なマナー違反と捉えられるケースが増えています。もしパートナーから同様の指摘を受けたときは、まずは事実を確認し、自覚をもって改善に取り組むことが大切です。それが、大切な関係性を立て直す第一歩となるはずです。
「まだまだ課題は多いけれど、また妻と食卓を囲み、笑い合う時間を取り戻したい。そのためには、自分が変わる努力を惜しまない」と語るヨシヒサさん。その姿勢には、単なるマナー改善を超えて、“夫婦のあり方”そのものを見つめ直す真剣さが感じられました。
夫婦の肉体関係は今もなおレスの状態ではあるものの、最近では少しずつスキンシップも戻ってきているといいます。どんな夫婦にも、生活習慣の違いやすれ違いはあるもの。そうした“違い”を互いに受け止め、すり合わせていくプロセスこそが、夫婦の絆を強くしていくのではないでしょうか。
ヨシヒサさんの体験は、「クチャラー」というテーマを超えて、夫婦がどのように互いを尊重し、ともに成長していけるかを考えるきっかけを与えてくれる――そんな示唆に富んだ事例といえそうです。
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※写真はイメージです
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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