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首都圏で加熱する中学受験ブーム。一方で、小学生の不登校問題も、たびたびメディアで取り上げられています。
インスタグラムアカウント『yururelife』で不登校についての情報を発信しているまいこさん(仮名・48)は、小学5年生の長男A君の不登校に悩みながらも、A君本人のたっての希望で中学受験を決意したワーキングマザー。今回は、そんな彼女の「不登校を前向きに捉えるまでの葛藤」について、お話を伺いました。
「我が家は、同世代の夫と小学5年生の長男、小学3年生の長女の4人家族。学年は2年差ですが、実質年子のようなものです。長女は活発で背が高くクラスの中心的存在。一方で、物静かで読書好きな長男は小柄。まるで、性格が真逆だけど仲の良い双子を育てているような感覚で、多忙な毎日を過ごしていました」。
夫の松夫さん(仮名:50)は家事育児に協力的な子煩悩パパですが、大手食品系企業で管理職になって以降は多忙を極め、ワンオペ育児も続いたそうです。
「私は好奇心と探究心が強いところがあり、じっとしていられずにストレス解消に逆に動いてしまう性格。正社員として営業事務をしながら、学生時代に経験したファッションモデルの仕事を活かして読者モデルとしても活動もしていました」。
読者モデル活動ははじめは息抜きのつもりでしたが、「上手に手を抜く」ことが苦手なまいこさんは、「役に立ちたい」一心で多くの撮影を引き受けます。
「さらに『何かを学んでいる状態』が落ち着く性分もあり、仕事関連の資格だけでなく、アロマや化粧品や美容などの民間資格も次々と取得していました。今振り返れば、年子育児と正社員勤務、読者モデル業、勉強を同時進行する生活はハードそのものでした。気が付かないうちに疲れが溜まり続けて、ちょっとしたストレスが最後の一撃となって、完全にバーンアウトしてしまったんです」。
ある日、出勤前に強いめまいと息苦しさを覚え、かかりつけの内科に相談した後に、心療内科を受診。パニック障害とうつ病と診断され、そのまま会社を休職することに。子育てに専念する日々が始まりました。
「夫がしっかり支えてくれたこともあって、子どもたちは『最近ママが家にいるね』と喜んでくれました。いま振り返れば早期発見・早期治療で、順調に回復していたと思います。でも当時は、“順調”なんてとてもじゃないが思えませんでした。収入は減るし、読者モデル業も勉強も休止。取り残されたような焦燥感を抱えながらも、裁縫で子どもの通学グッズに刺繍したりして、気持ちを繋いでいました」。
A君の様子に変化が表れたのは、まいこさんのメンタルが安定し、社会復帰を目指し始めた頃のこと。
「1年生の頃から登校しぶりはありましたが、頻度が高くなったのは小学4年生の時です。長男はマイペースな割に繊細で、気を使いすぎる性格。保育園の頃から気にはなっていましたが、基本的には人懐っこく愛嬌のある子なので、友達にも恵まれて大きな問題はなく過ごしていました。穏やかに園生活を終え、小学校低学年の頃も帰宅してから“人疲れしてソファでグッタリする”くらいで、親が話を聞くなどケアをしていればなんとかなると思っていました」。
A君が4年生になった夏休み明けから、体調不良で休むことが増え始めます。その頃、家族の通勤の都合により引っ越しをすることに。東京都内の転居ではあるものの学区が変わりました。長女はすぐに馴染んで元気に登校していましたが、A君は登校を渋るようになり、5年生になったある朝ついに「学校に行けない」と号泣。
「私もバーンアウト経験者ですから、“これはまずい泣き方だ。無理に行かせちゃいけない”と直感しました。あまりに絶望的な泣き方をするので、『休んでもいいよ』と伝えると、長男は『休んだら勉強が遅れる。馬鹿になるかもしれない。僕はダメになる』と必死に訴えてきました。私は職場に連絡して当時受講していた復職プログラムを休み、『勉強は通信教育でもできるから大丈夫』と説得を重ねました」。
A君は休養を受け入れたものの、勉強への不安は根強かったといいます。
「彼の状態を見て、“これは専門家に相談しなければ”と判断しました。すぐに、区のこどもと家庭の相談窓口や、児童・思春期精神科のあるクリニックに連絡して予約。医師やカウンセラーと話しながら、“まずは休養を”という方向性で動き始めました」。
その間も、A君は通信教育の勉強を淡々と継続。むしろ、それが彼の安心材料にもなったのだとか。
「普通、こんなことになったら勉強なんてやめて休めということになるでしょう。でも逆に、勉強は、彼にとって“取り残される不安を和らげるツール”なんだと気づきました。また、クリニックでの診察を通じて、知的障害のない自閉スペクトラムの傾向があり、“大人数の環境で神経が過敏になりやすい”という特性も判明しました」。
繊細な我が子に発達障害があるという可能性は考慮していたものの、診断名は意外なものだったそう。
「自閉症スペクトラムです。確かに長男はこだわりは強いタイプですが『人の顔色を伺って気疲れしやすい』という性格から、むしろADHD寄りなのでは? と勝手に思っていました。しかし医師からは、ひとくちに自閉症スペクトラムといっても、様々なタイプがあると説明を受けました」。
そんなとき、長女の進路を考えて訪れた「私立中学フェス」で、A君が強い興味を示した学校があったそう。
「始めは、5年生の長男ではなく、3年生の長女の参考にと思っていました。3年生には早いとは思いつつ、情報収集のつもりで行ってみたのですが、付き添いで来た長男の方がとある学校に興味津々に。その学校は、探究学習に特化した新設校で、インクルーシブ教育にも理解がありました。偏差値は高くありませんが施設やカリキュラムの魅力的で、“あれ? ここなら受けてもいいかも?”と感じて、カウンセラーに相談しました」。
ここまでの記事ではまいこさんのメンタルに起きた変化と長男A君の変化を伺いました。【関連】では、フリースクールと個別指導塾と通信教育で中学受験を目指すA君の奮闘と、母親の苦労についてお話を伺います。
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※本作は取材に基づいたストーリーですが、プライバシーの観点から、個人が特定されないよう随時事実内容に脚色を加えています。
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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