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 国土交通省が、「マンション標準管理規約」を改正した。マンションの基本ルールとなる「管理規約」のひな型である「標準管理規約」を改正したのは、なぜなのか? どういった影響があるのか? について考えてみよう。
【今週の住活トピック】
「マンション標準管理規約」を改正/国土交通省
まず、マンションの「管理規約」とは何かを説明しよう。管理規約とは、マンションごとに、共用部分の維持管理や共同生活の仕方について、ルールを定めたものだ。定められた管理規約は、マンションを購入した人はもちろん、賃借人も守る必要がある。
そうはいっても、トラブルを避けるためには、きちんと定めておいた方がよい最低限の内容がある。そこで、国土交通省では、各マンションがひな形とするための「標準管理規約」を定めている。ただし、マンションの実態に応じて、それぞれで管理規約を定めることが望ましいとしている。例えば、ペット飼育が可か不可かのように、マンションごとに個別に定めたいルールもあるからだ。
また、標準管理規約が改正されると、自動的に各マンションの管理規約が修正されるわけではない。重要なルールである管理規約を改正するには、「普通決議」の過半数ではなく「特別決議」といわれる3/4以上の賛成が必要となる。そのため、それぞれの管理規約が古いままで、改正内容が反映されていないということもある。
例えば、以前の改正では「民泊」という新しい問題に対して、禁止するならこういった文言を入れる必要があるといった改正を行った。しかし、改正に応じて管理規約を変更していないマンションでは、勝手に民泊を始められてもそれを止める手立てがない、ということになりかねない。標準管理規約の改正は、自分たちが住んでいる、あるいはこれから購入するマンションの管理規約に適切に反映されているかを、チェックする必要があるのだ。
今回の改正は主にマンション関係法を改正したことによる実は、マンション標準管理規約はたびたび改正されている。さきほどの民泊のほかにも、IT化や感染症への対応、役員の担い手不足解消、管理費の滞納による管理不能など、さまざまな課題に対応するために、望ましい管理規約の姿を示してきた。
今回の改正にも理由があり、大きなものが「マンション関係法の改正」に応じたものだ。ではなぜ、マンション関係法が改正されたのか。背景となるのが、マンションの2つの“老い”だ。マンションが建築されてから高経年化して、建物が老朽化したり、時代にそぐわない構造・設備のままだったりする。居住する人たちが高齢化すると、維持管理に無関心になって合意形成が難しくなったり、場合によっては所有者が不明の住戸が増えたりする。
こうした課題を標準管理規約の改正だけでは対応できないため、その根拠となる「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」などが2025年5月30日に改正された(2026年4月施行)。それを受けて、今回、標準管理規約も改正されたのだ。
マンション関係法の改正に応じた内容の主な点は?では、具体的に改正された内容を見ていこう。
(1)総会決議における多数決要件の見直しなど
共有財産に関する重大な決定をするには、総会で「特別決議」により採択する必要がある。ただし、総会に招集できない所在不明者や無関心な欠席者が多い場合、出席者の賛成が多数であっても、母数に欠席者などが含まれるために否決される場合がある。
重要な事項が決まらないといったことを避けるために、特別決議についても出席者による多数決を可能にする見直しがされた。また、裁判所が所在等不明と認定した場合は、決議の母数から除外できることになった。
一方、高経年化で老朽化するマンションの増加に伴い、建て替えだけでなく、事業者に一括売却したり、1棟丸ごとリノベーションしたりと、再生のためのさまざまな選択肢が広がっている。すでに、建て替えについては4/5以上(耐震性不足の場合は3/4以上に緩和など例外あり)の特別決議で可決できるようになっているが、ほかの選択肢においても特別決議で採決できるようになった。
加えて、共用部分の大規模な変更となる「バリアフリー化」については、決議要件を2/3に緩和する。これによって、高齢化に対応したバリアフリー化をしやすくなるだろう。
■マンション標準管理規約における多数決要件(単棟型)

出典:国土交通省「令和7年マンション関係法改正等に伴うマンション標準管理規約の見直しに関する検討会」資料より転載
(2)国内管理人制度の活用
「国内管理人制度」とは、国籍を問わず区分所有者が日本国外にいる場合、管理組合からの連絡が取りづらく、マンションの管理にも支障が出ることへの対応策だ。管理組合が国内にいる国内管理人の選任・届け出を請求することができれば、管理に関する対応を国内管理人に求められる。国内管理人を活用する際の手続き規定などが新設された。
(3)管理不全状態にある専有部分の管理に対する制度の活用
所有者が不明だったり放置されていたりして、管理不全な状態になっている専有部分は、個人の財産であるが、マンション管理の観点からは放置できない。「所在等不明専有部分管理制度」や「管理不全専有部分管理制度」といった、裁判所が管理人を選任して管理させる制度を活用する際の手続き規定などが新設された。
■マンション等に特化した財産管理制度(裁判所が管理人を選任して管理させる仕組み)

出典:国土交通省住宅局・法務省民事局「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法」(令和7年7月)より転載
以上が主な改正点だが、ほかにも改正点があるので、興味があれば国土交通省のサイトなどを確認してほしい。
社会情勢などを踏まえた標準管理規約の改正もマンション関係法の改正に対応したものだけでなく、近年の社会情勢などを踏まえた改正点もある。
●なりすまし防止のための本人確認
大規模修繕工事事業者の社員など外部の者が、マンションの理事や管理組合員になりすまして、管理組合の会議に参加するなどの事案が発生した。これを受けて、管理組合の役員や専門委員会(大規模修繕委員会など)の委員などに就任する際に本人確認の必要を盛り込んだ。
このほか、喫煙に関するルールの整備(共用部での喫煙を認める・認めないなどの規定)、管理組合が取り組むべき防災関係業務の内容(防災マニュアルの作成や防災訓練の実施、防災用備蓄および組織化など)といったことについても追加している。
繰り返しになるが、標準管理規約はたびたび改正される。ただし、マンション管理にかかわる望ましい姿を反映した改正が多いことから、自分が購入した(あるいはする予定)のマンションの管理規約の内容が、最新の標準管理規約の内容とどう異なるのかを把握することが望まれる。
管理会社からも管理規約変更の助言があるだろうが、その目的や効果も理解したうえで、決議に臨んでほしい。自分たちのマンションをどのように維持管理していくのか、そのルールを決めるのは管理組合の構成員である区分所有者たちなのだから。
●関連リンク
国土交通省「マンション標準管理規約」を改正します
国土交通省「令和7年マンション関係法改正等に伴うマンション標準管理規約の見直しに関する検討会」資料
国土交通省住宅局・法務省民事局「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法」(令和7年7月)
この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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