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「早く退院して家事をやれ!」乳がんの妻に、夫が離婚宣告。入院中でも親権をとって離婚には【行政書士が解説】

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目次

今回の相談者・山下莉子さん(48歳。専業主婦)は自宅で転倒して骨折。救急車で運ばれて入院したのですが、別の検査で乳がんが発覚。しかも、肺や肝臓などに広がり、最終的には骨まで転移し、手の施しようがない状態でした。

 

◀関連記事『妻の入院より自分の夕飯が心配!? 48歳「ジコチュウ夫」から息子を守るため、苦渋の決断とは【離婚と親権】』を読む

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今まで胸のしこり、胸やけ、食欲不振など、乳がんを早期に発見できる機会は何度もあったものの、そのたびに夫の反対にあい、検診や治療を受けることはありませんでした。そして、「末期ガン」と診断されるまで野放しにしてしまったのです。

 

莉子さんは夫への不信感から、がんのことを伝えておらず、夫は骨折で入院していると思い込んでいます。そのため、入院3カ月目。「早く退院して家のことをやれ!このままじゃ離婚だ!!」と言い放ったのです。すでに息子さんは莉子さんの実家で暮らすようにさせていたのですが、残された時間のなかで何をすれば良いのでしょうか?

 

行政書士、ファイナンシャルプランナーとして2万件以上の夫婦の相談にのってきた筆者が、専業主婦が重篤な病気を患ったときの、お金と離婚について解説します。

 

<登場人物(相談時点。名前は仮>

夫:山下智樹(48歳。会社員。年収800万円)

妻:山下莉子(48歳。専業主婦)☆今回の相談者

長男:山下智弘(16歳。智樹と莉子の長男)

妻の母:宮本節子(76歳。年金生活)

 

 

入院中でも離婚をすすめるための第一歩

莉子さんは「こんなときに、そんなことを言われても、何も考えられないです」と涙ながらに言いますが、筆者は「ものは考えようです」と前置きした上で、「あえて離婚するという選択肢もありますよ。そのほうが息子さんを旦那さんから守れるかもしれません。どのようにお考えですか?」と諭したのです。

 

日本の制度では結婚している間、夫と妻がどちらも親権を持っています。しかし、夫婦が離婚すると片方が親権を失います(=単独親権)。離婚せずに莉子さんが亡くなった場合、親権者は夫しかいないので夫が息子さんを引き取ります。しかし、夫に息子さんを託して本当に大丈夫でしょうか?

 

厚生労働省の人口動態統計(2023年)によると、未成年の子(1人)がいる夫婦が離婚するケースは45,640組ですが、そのうち88%(40,076組)は母親が親権を持っています。

 

夫の性格は前編の通り、かなり自己中心的。しかも息子さんに対して愛情を持っているのかどうかは疑問です。今まで子育てに全く関与しておらず、実際のところ、息子さんを祖母(莉子さんの母親)に預けることになっても文句の一つも言わなかったのです。莉子さんは、このまま母親と息子さんが一緒に暮らすことを望んでおり、息子さん本人に確認したところ、「そうしたい」という返事を得ました。

 

正式に離婚するにはもちろん、役所に離婚届を提出しなければなりません。夫は一方的に「離婚だ!」と言い放ったのですが、実際のところ、離婚届に記入してくれるのでしょうか? 夫は熟慮の末、離婚という結論を出したわけではなく、怒りに任せただけでしょう。一度、冷静になって考え直した場合、「妻が入院中に離婚する」なんて異常だということは分かるはずです。

筆者は「今ならまだ感情的なので勢いのまま、記入する可能性はあるのでは? 何より離婚を言い出したのは旦那さん本人です。プライドが高いので、今さら『やっぱり離婚しない』と引っ込めることは難しいのではないでしょうか?」と助言しました。

 

 

養育費や財産分与を決める前でも離婚はできる

具体的には離婚届のなかで決めることは離婚の可否や離婚後の本籍地、そして息子さんの親権です。未成年の子どもがいる場合、父親と母親、どちらが親権を持つのかを決めなければ、離婚が成立しません(民法819条)。

逆にいえば、それ以外のこと…養育費をいくらにするか、財産をどのように分けるか、家財や家具、家電をどうするのかなどを決めなくても離婚できるのです。そして夫は自分のことしか興味がないので、残念なことはではありますが、子どもは面倒な存在でしかないでしょう。

 

夫の言動を振り返ると「俺が引き取る」と言わないのは目に見えていました。そして莉子さんは離婚届に自分の名前等を記入し、病院から自宅へ郵送しました。夫から「お前は俺がいないと何もできないのに本当にいいのか」とLINEにメッセージが入ったそうですが、「はい、結構です」と返すと、翌日には夫が役所へ用紙を提出し、離婚が成立したのです。

参考までに厚生労働省の人口動態統計によると直近(2024年)の離婚件数は18.5万組。1年前(2023年は18.3万組)と比べ微増しています。

 

 

自分の死後、夫を未成年後見人にしないための準備

ところで離婚してから莉子さんが亡くなった場合はどうなるのでしょうか?息子さんを引き取る人のことを未成年後見人といいますが、今回の場合、未成年後見人の候補は夫と莉子さんの母親です。最終的には家庭裁判所が候補のなかから後見人を選定します(民法840条)

 

「離婚するだけでは不十分です。離婚して親権を失っても旦那さんが息子さんの父親であることに変わりはありません。裁判所が今回の事情を知らなければ後見人を夫に指定する可能性もゼロではありませんよ」

 

筆者は莉子さんに注意したのですが、実際のところ、母親はすでに76歳です。裁判所に対して夫の性格や価値観、考え方を説明し、父親として不適格だと認めてもらうのは荷が重すぎます。そのため、莉子さんは離婚するだけでなく、誰を後見人にするのかを指定する必要があります。離婚すれば莉子さんが唯一の親権者なので、莉子さんの一存で後見人を指定することが可能になります。(民法839条1頁)。夫に協力してもらう必要はありません。

 

筆者は公正証書遺言という形で残すことを勧めました。莉子さんの希望を正式な形で書面化しておけば、裁判所が莉子さんの意思を尊重してくれる可能性は高まります。公正証書は原則、公証人が遺言を読み聞かせた上で、本人が署名するという流れです。

 

全国には公証役場があり、本来は莉子さんが出向かなければなりませんが、莉子さんは体力がかなり落ちており、もし外出した場合、感染症にかかる危険があります。もし感染した場合、肺炎などをこじらす可能性が高いので、担当医の許可がおりませんでした。しかし、このような場合、公証人は遺言者の希望する場所まで出張してくれます。そのため、莉子さんは公証役場へ行くことなく、病院の食堂で公正証書遺言の手続を終わらせることができたのです。

なお、生命保険文化センターによると2023年に作成された公正証書遺言は118,981件10年前(2014年、104890件)より増加しています。

 

 

そして莉子さんが急変し、亡くなったという連絡を受けたのはしばらくしてからのことでした。手続が間に合って良かったと安心した半面、もう少しやりようがあったのではないか。せめて息子さんが成人するまで命をつなげる未来もあったのではないか。そう思うとやりきれない気持ちになりました。

例えば、莉子さんが夫の言うことを無視し、勝手に乳がん検診を受けたり、陽性の場合は3割負担で治療したりすることも可能でした。もちろん、夫婦関係に波風をたてないことも大事ですが、もっと自分の身体と心を大事にする選択肢もあったのでは、と残念で仕方がありません。

 


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この記事のライター

OTONA SALONE|オトナサローネ

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