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会話が難しい自閉症児だった東田直樹さん。幼稚園時代の過ごし方をエッセイで公開しています。
◆自閉症の作家が綴る幼稚園時代の日常
『自閉症の僕が跳びはねる理由』で知られる作家の東田直樹さんによる幼稚園時代のエッセイ。会話が難しい自閉症児だった著者の視点から幼稚園の世界を見ることができます。保育者のお悩みに答えるQ&Aも収録され、保護者も保育者・支援者もほっと一呼吸できる1冊です。
今回は、「だから毎日、幼稚園に通えた」と「小さな虹」の2編を、書籍『自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた』(世界文化社)から一部抜粋してお届けします。
登園したら上靴に履き替え、先生に挨拶をして出席ノートにシールを貼る。それから自分の棚にかばんをしまい、上着を脱いでたたみます。毎日やっているにも関わらず、僕はみんなのようにできませんでした。昨日も同じことをしたのにと思われるかもしれませんが、僕にとっては毎回初めて経験するような感覚だったのです。手取り足取り教えてもらいながら僕はいつも笑っていました。「これから何をするのだろう」と胸がわくわくしていたからです。
先生たちは、少しでも僕ができればほめてくれました。だから毎日幼稚園に通えていたのだと思います。
梅雨の時期に降り続く雨音と保育室に響き渡る友だちの笑い声。ケケケケ、ポタポタ、ジャージャー、グワッ。
人差し指で両耳を塞ぎながら、じっと聞き入る自閉症の僕。「かえるの合唱」みたいなこの雨と声のコーラスは、うるさすぎたけどいやではなかったです。
晴れ渡った夏空の下、園庭で水遊びをしました。先生が空に向けてホースで水をまき、子どもたちはその下を裸足で走り回るのです。
ワーワーキャーキャー、右に左に大騒ぎ。ホースから出る水は、たくさんの水滴となって、子どもたちに降り注ぎます。
いつもの体操の時間には、一列に並んだり、大きな円をつくったり、自分の場所が決まっているのに、水遊びの時にはどこにいても叱られません。僕も腕をぐるぐる回しながら、大きな声を出して走ります。水滴が体にかかっても気にしません。夏草の香りをふくんだ風が、すぐに吹き飛ばしてくれるからです。
ほら、こんなに青空に近づけたよ。思い切り跳びはねる僕。ホースの先を僕のほうに向けてくれる先生の後ろから、夏の光が照りつけます。笑顔いっぱいの僕の瞳には、七色に光る小さな虹が映っていました。
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この続きは、是非書籍でご覧ください。
※本記事は、『自閉症の僕の子ども時代 だから毎日、幼稚園に通えた』著:東田 直樹/世界文化社より抜粋・再編集して作成しました。
この記事のライター
マイナビウーマン子育て
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