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東京・吉祥寺で人気のギャラリーとパン屋を経営し、すてきなライフスタイルで注目を集める引田ターセンさんと、かおりさんご夫妻。築20年のコンクリート造の一戸建てをリノベーションしたお住まいを訪ね、シンプルで心安らぐ空間のつくり方についてお聞きしました。
家族の成長に合わせて、快適な住まいは変わっていい
引田さん夫妻のリノベーションしたお住まいは、珪藻土の壁に、床はリネンウールのカーペット、天井やドアまで全て国産のナラ材を使った1LDK。まさに大人の洗練された空間ですが、子育て中のころの家はおもちゃの滑り台があったり、子どもの作品を飾っていたそうです。
「食器も変遷しています。ジノリやロイヤルドルトンなどヨーロッパの絵付け食器の時代もあったし、染付けの時代もあった。それぞれの時代があったんです。子どもがいてにぎやかなときにはヨーロッパの絵付けなど柄物が良かったけれど、夫婦2人の暮らしになると、食事の好みにも合わなくなってくる。ギャラリーを始めてからは、作家物がふえました」(ターセンさん)
「ただ、私たちは子どもが小さいころから洋服でも家具でも、「いずれ大きくなるからちょっと大きめを選ぶ」ことはしませんでした。今の暮らしにジャストであることを、大事な基準にしていたのです」(かおりさん)
玄関ホールを入ると、トップライトからの光が差し込むリビング。壁や天井には国産ナラ材を使い、床はリネンウールのカーペットを敷き詰めたナチュラルな空間(写真撮影/菊田香太郎)
中央にある暖炉と段差が、リビングとダイニングスペースを緩やかに分けている。左奥のデスクカウンターは、持っていたテーブルに質感も高さも合わせて造作してもらった(写真撮影/菊田香太郎)
シンプルを実現するコツは、なければどうかな?と考えてみることシンプルに暮らすために、引田さん夫妻が心掛けているのは、決め付けないこと、変化を恐れないことだと言います。
「こうだと決め付けず、なければどうかなとか、変えたらどうだろうとか考えてみることで、違ってきます。例えばバスマットは必要と思い込んでいますが、なくても困らないんです。お風呂上がりに体も足も拭いて、そのタオルを洗濯したらいいのですから」(かおりさん)
「バスマットがないだけで洗面室の印象は違いますよね。わが家はタオルも、彼女が気に入ったホテルのものを取り寄せて、その一種類一色に統一しているから、収納したときも自然とそろって見えます」(ターセンさん)
「キッチンもかつては、調理器具を見えるようにつるしてありました。でも料理している時間は、一日のうちでも1時間くらい。「しまってみようかな」とふと思って。フライ返しや菜箸を、しまっても何の問題もなかった。逆に何も出ていないほうが、拭き掃除がしやすくなりました」(かおりさん)
ペーパーホルダーやキャビネットの取っ手なども同色、同じ質感でそろえた。バスマットもなく、余計な物を一切置いていないため、洗面室と浴室がいっそう広く感じられる(写真撮影/菊田香太郎)
シンクと配膳台の間は幅108cm。吊戸棚はつけずに視界もすっきり。一部を仕切り壁にして調理中の煩雑さは見せないようにした(写真撮影/菊田香太郎)
「ギャラリー経営でたくさんの人や物に会うことが仕事になって、家にまでモノがあふれていたら疲れが取れないと思うようになり、どんどんシンプルになりました」というターセンさん・かおりさん。
仕事柄、気になる物があったら、実際に買って使ってみることを大事にしているが、手にして納得したら、人に差し上げることも多いのだそう。「本も感動したら周りの人に薦めて渡すほうが好き。食器も洋服も、自分たちが気持ちいいと感じる量しか持たないようにしています」(かおりさん)
「家は四角い箱。中に入れるモノのためではなく、自分たちに合わせて暮らしたほうが楽しいですよね」(ターセンさん)と語ってくれました。
文/中城邦子
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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